人気ブログランキング | 話題のタグを見る

介護の現実を描きます。ITトピックスをお知らせします。旅と歴史を描いた私のHP「日本ぶらり歴史の旅」(英文もつくってあります)http://www.ab.auone-net.jp/~nut/にもぜひアクセスしてください。


by burari-skuri

悠一郎の介護メモ 17 5度目の面会-包帯が取れる

なつかしの小学校唱歌を歌う

 病室に入ると、幸子はすぐわかって喜びの声をあげました。包帯は取れて1週間前にかさぶたになっていた皮膚はとてもきれいになっていました。しばらくして、悠一郎がなつかしの唱歌集を歌うと、「ふるさと」や「海」のように静かな歌は息が静かになり、「猩々寺」のように陽性の歌を歌うと「アハハ」と笑いだしました。
 
 ところが、「通りゃんせ」を歌い、2年ほど前に電車に乗り駅から歩いて行った亀戸天神の話を向け、「お母さんも行ったね。赤い橋があって藤が咲いていたね。あそこ神社は大きいね」というと、幸子は身を乗り出し、「そうですね」と答え、ほとんど横向きになって「ハア、ハア」と息が荒くなりました。悠一郎があわてて介護士さんに聞くと、「大丈夫」ということでした。

 かわいそうに腰には床ずれができています。だから3時間ごとに体位を左右に変えるのです。
悠一郎のギックリ腰の骨のいたみは、幸い一段と良くなりました。

 幸子が何かを訴えるように表現しようとしますが、表現になりません。「そうか。そうか」、悠一郎はもう1度手をにぎってやりました。いつまでも、こうしてやりたいと思いました。しばらくして、悠一郎はそっとさりげなくバスの停留所に向かったのです。


 
by burari-skuri | 2007-08-08 19:51 | 介護・老い