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by burari-skuri

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在宅介護

こうして退院以来約半年の在宅介護生活が始まった。毎日就寝前に精神安定剤1錠、睡眠促進剤レンドルミン1錠、サイレース半錠を服用する。便秘に対しては、頑固な便秘のときは3日に一度、ブルゼニドというクスリを就寝前に2錠とコップ1杯の水を飲む。そしてブルゼニドを飲まないあとの2日間は、夕食後に酸化マグネシウムを1包飲むようにしている。

 とにかくお茶やスープなど水分をたっぷり飲むことが大事である。幸い幸子は胃腸が丈夫だから、クスリを飲んでいても下痢などは皆無といっていい。クスリを飲んでいるから、むしろ便秘気味になる。ただ便秘になると、気持ちが悪いから落ち着きがなく、居間とトイレの間を行ったりきたりすることになる。

 しかし、ナーシング・ハウスに入院中にスッカリ徘徊癖はかげを潜め、外へ出かけなくて済むようになった。遂には強力なブルゼニドを服用しなくても、酸化マグネシウムの服用で、毎日、便通があるようになってきた。生活のリズムを取り戻したのである。4カ月半ほど、こういった状況が続いた。

 ところが、ガス会社と区が交互にガス幹線の管を新品に換える工事と、道路工事をすることになり、5月初めの朝、道路をカットする作業が突然行われたため、幸子がおびえ、せっかく取り戻した生活のリズムは元の木阿弥に戻ってしまった。

 基本的には、睡眠薬の影響が起床後、昼間まで残るので、昼間に居眠り体制に入ってしまうのだ。これをなくすには、睡眠薬の種類を変えたり、就寝直前ではなく、たとえば夕食後にもう投与するとか試みてみるため、家族、在宅サービス・センター、医師の三者が緊密な連絡を取り合うことにした。とにかく幸子にいちばん合った方法と時間を探して、三者が緊密にサポートすることが大事なのである。

迷いと、選択

 道路工事が始まる前のことだが、一段落したので公子は、自宅に帰ることにし、2月の後半にまた来てくれた。公子がいるときは、三度、三度の料理、洗濯、掃除をしなくて済むのだから、まことに助かる。有り難いことだ。毎週火、金、土の4日間がデイ・サービス、月、木の2日間が買いもの介助、日曜だけがフリーの生活をおくっているのだが、頻繁に幸子を預かってもらう時間を8時まで延長した。これは家族にとって自由時間が増し、その間体が休まるし、時間を生産的に使えるのでおすすめしたい。

  公子がいるときは、家事をあっという間にかたづけるばかりでなく、家の中がさまになってくる。幸子が入院している間は、悠一郎親子は、介護労働から開放され、午後に面会にいけばよかった。 しかし、デイ・サービスと買い物介護を利用することは、介護者の負担を大きく軽減するが、過重な精神的、時間的負担の根本的解決には結びつかいないことがわかってきた。

 悠一郎は、蓄積された介護の疲れから入院の破目に陥り、退院、過去半年の在宅介護生活を振り返って次ぎのように自分を総括するのであった。

1.公子が家に帰っていて、幸子の情緒が穏やかで安定しているときは、妻が認知症でものの脈絡がわからなくなっているものの、毎日夫婦が向き合っていて、夫婦だけがわかりあえる「あうん」の呼吸が存在するのを感じる。

2.個人、個人によって病状は異なる。海馬の遺伝子がスキスキでも、前頭葉が萎縮していなければ、論理的発言、日常会話ができる。だから、粗暴な振る舞いはしない。したがって、表情は、それなりに豊かだ。

3.上述のように、夫婦のあうんの呼吸ですべてを解釈し、在宅介護をすることが果たして本人にとって幸福であろうか?本人は、「寒い」「暑い」「帰る」と表現するときは、下の用をたしたいことが多く、しかし、トイレがどこにあるかがわからない。したがって、トイレまで連れて行って、ズボン、パンツの上げ下げも介助してあげることとなる。女性の場合は、とくに気を「すみません」という言葉が自然にでるし、ときには「有り難うございました」と頭をさげられたりして、悠一郎は「いいえ」とこたえながらジーンときてしまう。女性はトイレの問題では、とくに気を使っているのが言外に伝わってくる。

4.アルツーハイマーの認知症は、あるときはものの認識の度合いが高く、たとえばズボンや靴下がすらすらとはけるかと思えば、あるときは歯がゆいぐらい手間がかかる。つまりマバラで、一進一退だ。だが、介護する人は決してぞんざいに扱ってはならない。身内だと、ついつい声が大きくなったり、荒っぽい言葉になってしまうが、結局、それはいい結果を生まない。

5.いまはデイ・サービスと買い物介助を利用しているが、そのほか数日から10日くらい認知症の人を与り、サポートしてくれるショート・ステイ・サービスや、暮しまでサポートしてくれる特別養護サービスまで行っているセンターもある。要は、これらのサポート・サービスを組み合わせ、家族の介護者が肉体的、精神的に共倒れにならないようにしないといかない。悠一郎の入院がいい例だ。

 そう悠一郎は、考えるようになった。   

 -次回「悠一郎の入院」                   
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by burari-skuri | 2006-06-22 16:00 | 介護・老い
前頭前野を刺激

 読者に行き抜きの回をいただいて,「介護」の8回目は、近頃話題の読み書き計算治療について書かせていただきます。

 NHKの3チャンネルを見ていましたら、東北大学の脳科学者 川島教授が実験し、開発した認知症、とくにアルツーハイマー病患者さんに意欲を出させ、微笑させ、表情を豊かにする「読み書き計算治療」が紹介されていました。

 悠一郎は、1980年代に通産省(いまの経済産業省)が実施した考えるコンピュータを目標にした「第5世代コンピュータ」開発プロジェクト(10年計画)の委員会の委員をつとめたことがありますが、このときに人工知能のことを研究した経験をもっております。つまり、人間の脳の働きを解明しようとするものでした。

 いまはヒューマノイド・(人型)ロボット・ブームですが、人間のように常識を備え、喜怒哀楽を表現し、それらの結果を行動することができるロボットはありませんし、永久に製作できないでしょう。論じると長くなるのでここでは述べませんが、その理由は人間と同じように考え、常識の枠内で行動するロボットは、人間生活を生き、経験しない限りできないからです。

認知症医療・介護には総合的アプローチを適応して欲しい

 アルツーハイマー病は、いまの医学のレベルではアリセプトの投与によって、進行を遅らせることしかできず、それも個人差があって、効果が上がる人と、上がらない人があることが知られています。残念ながら、幸子は、1年間の服用をした経験から、効き目がないほうだと判断せざるを得ません。

 そこでアリセプトの服用を中止し、精神安定剤のセロクエル、睡眠促進剤のサイレース、レンドロミン、ならびに便秘抑制剤の酸化マグネシウムの投与に切り替え、今日にいたっています。
 悠一郎は、医療と介護は、現在使える医療と介護を総合的に援用してこそ効果が上がると考えているのですが、残念ながら現在のマスコミの報道は、鬼の首を取ったようにあるニュースが発生すると、そのことだけを一面的に報道し、総合的ではありません。

 最近、NHKから放映された、東北大学の脳科学者川島教授の「読み書き計算治療」は、アルツーハイマー病患者さんに福音をもたらすものではないでしょうか。また、聞き漏らしましたが米国の(ハーバード大学か、スタンフォード大学か?)大学で開発されたアルツーハイマー病の治療問題が世界で初めて発表されたと、ミノモンタの正午の番組で見ました。

 二つとも前頭葉の前頭前野を刺激する療法で、前者は1+3=など、簡単な計算を10数項やってもらい、いくつかのフレーズを声を出して読んでもらう方法でした。初めは嫌がっている患者も、やがて積極化し、94歳の笑わなかったおばあさんが微笑を取り戻し、生き生きしてくる様子を映し出していました。

 後者は、初めに六っつの単語を示して記憶させ、次に2桁数字の足し算を3~6項やらせ、そして初めに見せた六っつの単語を覚えているだけ言わせるか、書かせるというものでした。
 すばらしいことは、両方とも脳細胞は死滅するのみとしている従来の知見を、そうではなくて、こういった方法で、前頭前野を刺激すると、新たに遺伝子を作るという新知見が示されていることです。

医療・介護のあり方について思うこと

 そこで悠一郎は、いまの日本における認知症の治療と介護に対する在り方について、次ぎの感想を抱くようになりました。

* 人間の脳は、140億個の脳細胞から成り立っているが、毎日のように死滅し
 ている。しかし、140億個もあるのだから、一生に使いきる脳細胞は限られた
 数だ。だから、頭は使えばつかうほどよい」というのが、従来の学説です。
 ところが、最近は、ショウジョウバエの遺伝子の種類は約2万で、人間のそ  
 れも2万数千。しかし、遺伝子の材料は蛋白質でできている。しかし、その
 折れたたみの構造がどのように形成されるかを解析するには、現在のスーパ
 ーコンピュータでは不可能。その解析にはペタ級(ペタは、1秒間に1,000兆
 回の浮動小数点演算)の超超高速スーパーコンピュータが必要。だから5年
 以内にアルツーハイマー病の遺伝子の構造が判明するかもしれない。

* 海馬は、長期記憶と短期記憶を司り、知識の格納庫である前頭葉との連携を
 制御していると考えられますが、強い印象を経験した記憶遺伝子は、長期記 
 憶の引き出しに入れられ、必要なときに作動すると考えられます。アルツー
 ハイマー病にかかると、ある記憶を作動している遺伝子が、この引出しから
 外へ出ていってしまう結果、ある対象物とある対象物の関係が示されなくな 
 り、脈絡のない言動をすると考えられます。
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by burari-skuri | 2006-06-15 15:13 | 介護・老い