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by burari-skuri

論点8 NHKの中途半端な認知症に悩む人びとの報道

認知症の論議は入り口に終始

 認知症にかかっている人は現在170万人、10年後は350万人に膨らむと予測されている。2008年1月20日夜9時NHKは、「スペシャルNHK」を流し、介護をする人びとを含む認知症に悩む人びとの現状を取材、報道した。

 筆者はアルツハイマー型認知症の妻を介護してきた経験から感想を述べることにする。

 筆者のかかりつけ医は日大医学部出身で、臨床医学最前線と太いパイプをもっておられ、先生の優秀さと豊富な経験もあり、約7年前には妻が若年性アルツハイマー病にかかっていると診断された。ときに妻は63歳。そこで都立医療センターの物忘れ外来に診断を申し込むことになった。

 ところが、専門の窓口である精神科の予約受付は10月であったのに、予約がとれるのは4ヵ月後の翌年2月という話。。そこで、かかりつけ医に相談したところ、「それなら神経内科もの忘れ外来から戦術的にやってみましょう」ということになった。

 すると、すぐに診断の予約が取れ、翌週には診断になり、MRIを撮った結果、海馬のDNAがすきすきであることがわかった。認知症に詳しいかかりつけ医でこんなに違う例である。

 報道では夫婦のどちらかが認知症で、入り口のところで戸惑っている姿であった。これらの人びとは不安ななかで医師に抗うつ剤と認知症の進行を遅らせるアリセプトというクスリを処方されますますかえって不安定になり、不安にうちひしがれてきた姿であった。

認知症には2種類ある

 認知症は大きく言って脳血流異常とアルツハイマー型津の2種類があるのだが、報道ではそのことが明らかになっていなかった。筆者の旧満洲の中学校のクラスメートはリハビリ法の大家である。彼に電話をかけ聞いていたのと、本を送ってくれたので、読者のご参考のために書くと、認知症には大きく言っての血流異常型、アルツハイマー型の2種類があり、前者は脳梗塞型の疾患を指し、後者は記憶と思考との間をとりもつ海馬に関係している。

 アルツハイマー型認知症と脳血流疾患のある人は、表面は同じような病状を伴うが、アルツハイマーにかかっている人は海馬の欠陥であるから、ものの認識ができなくなるの末期においては、坂道を転がるようにものの認識ができなくなり、例えば食べものを前ににしてもそれが食べものと認識せず、口を開かなくなり、いま自分がどこにいるかがわからなくなり、歩くことを忘れその場に座り込んでしまう。一方、脳血流疾患の人は肢体不自由を伴う。つまり、アルツハイマーは思考との間をとりもつ海馬の病であるから、言葉の表現が支離滅裂となり人格破壊が起こるのに対し、脳血流疾患の人は人格破壊が起こらない。

 クスリといえば完治薬はなく病気の進行を遅らせるアリセプトというクスリがある。しかも、アリセプトは個人個人によって効き目が違い、使ってみないとそれがわからない。また、現在までに実にいろいろな抗うつ剤が開発されており、医師は自由に処方できる。睡眠促進剤もいろいろあって驚かされる。つまり、医学は脳をここまでコントロールできるという段階に達しているということである。

 放映では、これらの薬を投与されてそれが個人の病状に合わず、困った例が取り上げられていた。筆者が強調したいのは、アルツハイマー病は人格破壊が起こる不治の病であることだ。一方、脳血流疾患は老いとも関係するが、涙ぐましいリハビリ努力によって完治する例があり、人格破壊は起こらない。

 放映では、この区別がなされていなかった。筆者はこの放映に出席した人びとはアルツハイマー病のことは先刻承知していていると思うが、アルツハイマー病にかかっている人は、自分がどこにいるかがわからないのだから、不安で不安でしょうがなくなり、時間に関係なく徘徊が始まる。

硬直した報道体制?

 放映が客観的でないようではNHKの総合テレビという言葉がなくというものだ。これでは認知症の放映が誤ったイメージを伝えてしまう。

 すでに発表されたように、京都大学中山教授は再生医学の面で、患者自身から幹細胞の再生可能性を示し、大学を超えた協力体制が動き出そうとしている。

 NHK総合テレビと名つける以上は客観的であるかの反省がなくてはならない。そして、とかく遅れがちの日本の新薬認可に焦点を当てた報道があれは科学部の扱いなどとの縄張り意識を超えて総合的、客観的に行われなくてはならない。「その時の歴史を動かす」ぐらいの気概をもて当たるべきだ。

 話題になっているから取り上げる惰性的番組編成はやめてもらいたい。
by burari-skuri | 2008-01-26 15:00 | 論点